「外科医の誕生日の手術は危険」という研究結果を、患者はどう考えるべきか | News&Analysis | ダイヤモンド・オンライン
よく似た話に「仏滅」の日に交通事故が多いという話を聞いた。これは警察の業務日誌からデータを作成して分かった傾向らしい。結われだと思っていたが、やはり「仏滅」の日は避けようということになる。
2回目の緊急事態宣言がなされた。日本医師会会長は「医療崩壊」から「医療壊滅」になることへの警戒を促した。コロナ感染者の中等症以上の人数が増えている。一人の患者に6人の医療スタッフが必要で負担の重さから退職するスタッフも出ている。
米国のビッグデータの解析から「外科医の誕生日に手術を受けた患者の死亡率が、誕生日以外の日に手術を受けた患者の死亡率よりも高い」ことを明らかなった(研究成果は、「BMJ)」のクリスマス特集号にオンライン掲載されている)。
手術の結果は常に最適ではない。20~30%の患者が手術後に合併症を経験し、5~10%の患者が死亡すると報告されている。これまで外科医が目の前の患者に全集中できない勤務状況がパフォーマンスに与える影響は、十分検証されていなかったようだ。
スマホの着信音や医療機器のトラブル、手術内容とは必ずしも関係ない会話など、手術中の外科医の注意をそらすような物事は数多く存在するが、研究チームは、手術を早く終えようとするなどの影響が想定される「誕生日」に着目した。
今回の研究結果が意味は、医師の労働環境を整備すること(=働き方改革)は、医師の過労やバーンアウトを減らすだけでなく、患者が質の高い医療を受ける観点からも重要であるということだ。
自分が誕生日で家族が家で待っているので早く帰りたいということを言い出せない日本の方が、誕生日を重要視する人が休みの取得を公言して早めに帰宅することが許容されている欧米よりも場合によって影響は大きくなる。
当然これは「誕生日」の研究ではない。重要なのは外科医にいかに手術に集中できる労働環境を整備するかである。そのメカニズムを理解する必要がある。手術室を静かな環境にするルールや複数の外科医によるチーム医療が必要になる。
誕生日の術後に患者に変化があって、病院に執刀医が戻ってくる確率が低くなるのであれば、チーム医療によって他の医師が術後管理を担当するシステムも有効に機能すると思われる。