これもいいに違いない?

「1本1万円」のネギを売る農家が、ホンダのF1参戦と同じくらい戦略的な理由

 

 自分が買いたいグレードが一番高いと購入を躊躇する。買いたいグレードを超えるグレードが発売されると、買いたかったグレード買う。躊躇していた理由を納得できる理由ができるからだ。人は言い訳を探している。

 

 こういう人間の心理的な原理はずっと以前から利用されてきた。ホンダのVTECエンジンは今も人気が高い。「F1で勝てるほどのエンジンが作れるのならば、普通の車も性能もいいに違いない」と思ってもらえるとの考えだろう。購入の動機ができる。

 

 そう考えると、1本1万円のネギや1粒5万円のいちごも同じ心理作用を応用しているものと考えられる。ネギは贈答用フルーツにヒントを得て、規格外の太さで、味も極上のネギを贈答用に売り出した。富裕層の間で完売するほど売れたというわけだ。

 

 「1万円で売れるほどのネギを育てられるのならば、普通のネギの品質もいいに違いない」と消費者に思わせられれば、同社産の普通のネギが、他のネギより多少高くても、売れる。そう判断したのだ。

 

 その根底には、育成の技術と知見そして絶え間ない努力があったからこそ実現できたということは、ネギもいちごもエンジンも同じだ。