派遣切りは効果あるのか?
「タカダ式操業度分析」でみる日産
(〔図表 1〕(日産自動車の「派遣切り」が事業効率向上につながらない理由))
このように〔図表 1〕は、
(1)理論上の利潤を最大にする売上高(最大操業度売上高)
(2)量産効果を最も発揮できる売上高(予算操業度売上高)
(3)利益と損失の分水嶺となる売上高(損益操業度売上高)
(4)実際の売上高
4種の売上高の推移を並べて企業の収益力を判断しようとするものである。
損益操業度売上高よりも、損益操業度率が重要
(〔図表2〕(日産自動車の「派遣切り」が事業効率向上につながらない理由))
図表 1〕の予算操業度売上高を100%に置き換えて、最大操業度売上高・実際売上高・損益操業度売上高それぞれを、最大操業度率・実際操業度率・損益操業度率という百分率表示に改めたのが〔図表 2〕である。
派遣切りは損益分岐点の改善にならない
2008年の暮れから非正規社員(期間工)の解雇や新規設備投資の凍結といった形で、どこの企業でも展開されている「減産ブーム」である。
こうしたリストラ策のうち、いわゆる「派遣切り」は、損益分岐点を改善させる効果がほとんどないことがわかった。
ワークシェアリングの功罪
一方、派遣切りと同時に話題となっているワークシェアリングのほうは、損益分岐点を改善させる効果があるようだ。
ただし、営業部門や研究開発部門にワークシェアリングが機能しないし、思い切って休業するにしても60%以上の賃金を保証する必要があるから(労働基準法26条)、その効果も限定的であろう。
厄介なのは、業績が悪化しているのに損益分岐点が改善しているように見える場合もあるし、業績好調であっても損益分岐点がそれを上回るスピードで上昇する場合もある点だ。
禅問答のような表現をするならば「削るにあたって抵抗力の弱いコストは、いくら削っても赤字転落を食い止める効果はない」のである。
コスト削減と損益分岐点を区別して経営戦略を展開していかないと、業績悪化という傷口に塩を塗りかねない。
日常からブレることなくコスト削減を戦略としているトヨタの強さの片鱗を伺い知ることができそうだ。